アーカイブズ資料館長 田中享二
防水アーカイブズ資料館が活動を始めました。
わが国で最初に防水工事が行われたのは、明治38年(1905年)の大阪瓦斯事務所建物と云われています。それから数えると、わが国の防水も優に100年の歴史を持ちます。その間、先人たちにより材料・工法が研究され、多くの書籍や技術資料が整備され、それらを基に施工がなされ、現在に至っています。
どの分野もそうですが、現在の技術は過去の技術の積み重ねの上にあります。そして過去と現在の技術は未来の技術のインキュベーター(孵卵器)となります。だから過去と未来は繋がっています。過去の情報は古いからと言って安易に切り捨ててはなりません。
ただ残念なことに、防水の分野では過去の材料、関連したひとの情報、関係した貴重な文書などは多くが捨てられ、消失しています。実は現在のものも同じ運命にあり、当たり前のように我々のまわりにある防水情報も、手をこまねいているとやがて霧散消失してしまいます。
これら貴重な防水遺産の消失を何とか食い止めなければならない、そう考えた有志が集まり、日本建築学会防水工事運営委員会内に、防水アーカイブズワーキンググループを2013年4月に作っていただき、その保存・研究活動を開始しました。ただ学会の委員会は期間限定の短期的組織であり、これら防水遺産の長期保存に耐えうる組織ではありません。今後も増える防水遺産の安定的に後世に引き継いでゆく施設がどうしても必要です。そしてそのための拠点となる施設が、この度設立した防水アーカイブス資料館です。
これから皆様といっしょに貴重な防水遺産を後世につないで行きたいと考えています。ぜひご協力をお願いいたします。