防水に関する研究

日本建築学会大会で発表された
防水アーカイブズ研究報告

< 報文の標題・番号は発表時のまま記載 >

防水アーカイブズに関する研究
メンブレン防水層の性能評価試験方法の系譜

1495 日本建築学会大会(近畿)2023年9月
清水市郎、 田中享二、 松尾隆士

要旨 防水層の評価を性能で行う研究報告の系譜を年代別に説明している。

1969年(昭和44年)日本建築学会、建設省建築研究振興協会による性能評価研究から始まり、2000年(平成12年)日本建築学会JASS8(防水工事)において、メンブレン防水層の耐久性能試験方法(案)が掲載された。この間の性能評価項目について報告されている。

防水アーカイブズに関する研究
断熱防水工法の歴史

1496 日本建築学会大会(近畿)2023年9月
吉永 忠、関原克章、中沢裕二、田中享二、 松尾隆士

要旨 現在では、省エネルギーの観点から、断熱防水工法が一般的になっている。古くは、昭和8年竣工した大阪ビル南館の屋上に炭化コルク板を防水層の上に敷設し、建物には防水のみならず断熱の重要性が強調されている。

本報告は合成樹脂系断熱材(硬質ウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン)の変遷について纏められている。

また断熱防水として、仕様化された変遷について報告されている。

防水アーカイブズに関する研究
我が国における建築用シーリング材の変遷

1497 日本建築学会大会(近畿)2023年9月
野口 修、飯島義仁、寺内 伸、田中享二、 松尾隆士

要旨 1950年代の油性コーキング材及びポリサルファイドシーリング材の輸入から始まり、各種シーリング材が国産化された変遷が年代別に、また種類、生産量及び現在のシェアー率が年表に纏められている。

我が国では1960年日本住宅公団による油性コーキング材の共通仕様書への採用と1968年竣工の霞が関ビルにポリサルファイド系シーリング材が採用されたことから大きく発展したことが報告されている。

防水アーカイブズに関する研究
シーリング材の最適断面形状の研究の経緯と標準化の変遷

1498 日本建築学会大会(近畿)2023年9月
飯島義仁、野口 修、寺内 伸、田中享二、 松尾隆士

要旨 シーリング材の接着剥離の防止、耐久性に大きくかかわっている最適断面形状の研究の変遷と標準化について報告されている。

シーリング目地設計における断面形状の重要性について①目地断面を凹レンズ状(鼓型)にする方法②目地断面を正方形ではない矩形状にする方法の2点に関し、研究の変遷と標準化の経緯が詳細に纏められている。

(文責:関原克章)

< 報文の標題・番号は発表時のまま記載 >

防水アーカイブズに関する研究
大正~昭和初期の日本建築学会建築工事標準仕様・アスファルト防水工事について

1566 日本建築学会大会(北海道)2022年9月
関原克章、中沢裕二、寺内伸、松尾隆士、田中享二

要旨 日本建築学会が最初に建築工事仕様書を発表したのは大正12年6月に建築雑誌への記載である。防水工事は雑工事に分類されており、天然アスファルトのマスチック塗りやレンガ目地への充填などが仕様となっている。その後大正14年から昭和6年にかけ標準仕様調査委員会により各工事の仕様が順次報告されている。昭和3年に防水防湿工事が発表され、現在に近いアスファルト工事仕様となっている。その後、長期の空白期間を経て昭和27年現行に近いJASS8 防水工事が制定された。

防水アーカイブズに関する研究
その1 霞が関ビル地下外壁の二重壁の納まりと施工

1567 日本建築学会大会(北海道)2022年9月
名取健太郎、内藤龍夫、勝俣健、松尾隆士、田中享二

要旨 霞が関ビルに先立ち、1960年に竣工した日比⾕三井ビルは地下外壁と床が二重となる工事が採用されている。発注者と施工者が霞が関ビルと同一であったことから、霞が関ビルも同一の二重壁、二重床が採用された。この工事の配置、納まりについて報告されている。またそれぞれの工事の留意点も述べられている。

防水アーカイブズに関する研究
その2 霞が関ビル地下外壁の二重壁の調査と補修

1568 日本建築学会大会(北海道)2022年9月
勝俣健、内藤龍夫、諸橋由里奈、松尾隆士、田中享二

要旨 前報に続き、竣工後30年経過時点に行った調査結果が報告されている。二重壁としての機能は十分果たしており、地下防水の構法として完成度が高いことが確認できた。

防水アーカイブズに関する研究
オープンジョイント構法の研究と技術の変遷

1569 日本建築学会大会(北海道)2022年9月
野口修、飯島義仁、寺内伸、松尾隆士、田中享二

要旨 オープンジョイント構法関連の研究発表(1965年~1997年)が一覧表に纏められている。クローズドジョイントとは基本的に異なるが研究の変遷から、今後さらに発展する可能性が指摘されている。実建物への適用事例も紹介されている。

防水アーカイブズに関する研究
我が国におけるシーリング材の許容伸縮率の変遷

1570 日本建築学会大会(北海道)2022年9月
飯島義仁、野口修、寺内伸、松尾隆士、田中享二

要旨 シーリング材は目地ムーブメントに耐えることが求められ、応力度よりは変形率・ひずみ・伸縮率などの変形性能に関する指標が重要である。本報ではシーリング材の設計上不可欠な性能「許容値・設計伸縮率」が過去どのように規定されてきたか変遷が報告されている。

(文責:関原克章)

< 報文の標題・番号は発表時のまま記載 >

防水アーカイブズに関する研究
その1 大石寺の防水施工に関する資料収集とアーカイブズとしての意義

1444 日本建築学会大会(東海)2021年9月
寺内 伸、飯島義仁、関原克章、中沢裕二、野口 修、松尾隆士、田中享二

要旨 大石寺は宗教法人創価学会が1972年に建設した稀にみる大規模な建物であったが諸般の事情により1998年に取り壊された。当時の工事記録から、防水工事、シーリング工事の詳細を調査し、防水アーカイブズとしての意義について、考察している。

防水アーカイブズに関する研究
その2 大石寺正本堂に用いられた防水層の詳細と考察

1445 日本建築学会大会(東海)2021年9月
関原克章、中沢裕二、寺内伸、松尾隆士、田中享二

要旨 大石寺正本堂の防水工事はアスファルト防水、シート防水、塗膜防水が施工箇所ごとに使い分けられている。当時の日本建築学会の材料施工委員会・防水工事のメンバーにより仕様が決定されている。主要建物は、2重スラブになっており、それぞれに防水層が設けられている。当時の防水工事の時代背景と仕様決定までの経緯について報告されている。

防水アーカイブズに関する研究
その3 大石寺正本堂のシーリング工事

1446 日本建築学会大会(東海)2021年9月
飯島義仁、野口修、寺内伸、松尾隆士、田中享二

要旨 大石寺のシーリング工事の規模は、20世紀最大と言われており、この工事の詳細について工事記録、関係者の座談会記録などから報告されている。シーリング材はポリサルファイド系とシリコーン系が使用されている。この工事の事前検討、施工技術、専門工事業の成立等は業界発展の重要な役割を果たしている。

防水アーカイブズに関する研究
霞が関ビル設備階の防水層の仕様と納まり

1447 日本建築学会大会(東海)2021年9月
内藤龍夫、名取健太郎、諸橋由里奈、松尾隆士、田中享二

要旨 超高層建物の設備計画に際し、中間階や設備階の位置が設定される過程と、構造上検討すべき事項、並びに中間設備階に採用された防水層の仕様と各部の納まりについて述べている。防水は熱アスファルト防水の4層仕様が採用され、機器類の振動を他階へ伝えないため防振性の炭化コルク板を押さえコンクリートの間に挿入している。

(文責:関原克章)

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防水アーカイブズに関する研究
明治期における防水工事用アスファルト関連の研究報告に関する調査(その1)

1369 日本建築学会大会(関東)2020年9月
関原克章、寺内 伸、中沢裕二、松尾隆士、森田喜晴、田中享二

要旨 前年、防水アーカイブズに関する研究の一環として、防水工事用アスファルトの変遷について報告しているが、その中で明治黎明期のアスファルトに関する資料として、黒澤利八、入来重彦、田村健二、村岡坦らの研究報告について概要を述べている。鎖国が終了し欧米からの技術導入が盛んになった明治期におけるアスファルトの研究資料は数多い。著者らは上記経緯により昨年に引き続き、さらなる明治期の主として建築および化学関連の研究資料を収集し、アスファルトが防水の基本原料として使用に至った経緯を調査した。本報文は時代背景、執筆者の専門技術と報告の意図と欧米の文献資料を含めそれらの引用状況を具体的に報告している。

防水アーカイブズに関する研究
明治期における防水工事用アスファルト関連の研究報告に関する調査(その2)

1370 日本建築学会大会(関東)2020年9月
寺内 伸、関原克章、中沢裕二、松尾隆士、森田喜晴、田中享二

要旨 前報に引き続き明治期のアスファルト防水に関連した資料の具体的な記述内容の報告である。重要な記録・資料を保存・活用し、未来に伝達するアーカイブズの基本方針に則り、欧米の情報が一挙に流入した明治黎明期のアスファルトの情報を収集・保存することはアーカイブズの不可欠な業務であると考える。資料文献について産地・産出状況、アスファルトの呼称・定義、成分の分析方法と成分表、アスファルトの特性、用途・利用の実態、施工上の注意点などの具体的な記述内容を表示している。

防水アーカイブズに関する研究
霞が関ビルの人工地盤防水層の納まりと施工(1)

1371 日本建築学会大会(関東)2020年9月
関原克章、寺内 伸、中沢裕二、松尾隆士、森田喜晴、田中享二

要旨霞が関ビルでは、建物を高層化することにより敷地内に余裕が生ずるため、広場を設けて緑化を図り、周辺低層部の屋上に人工地盤を設けて、公共の広場として一般に開放できる等、大きなメリットが生じた。

このことを施工面からみると、建物規模、構造の異なる高層・低層の建物が共存するため、それぞれの特徴を生かし、総合施工計画の基に工程計画、作業動線及び揚重計画等をより綿密に立案し実行することが要求される。特に人工地盤工事では、面積が広いうえに防水、タイル貼りや植栽関連工事等を短期間に、天候の良し悪しに係わらず一定の品質を確保しなければならない。更に、構造面からは高層と低層との建物では、建物重量と基礎・地盤性状の相違による不同沈下についての対応、及び地震等の揺れにより高層部と低層部との取合部の躯体に損傷を生じないためにエキスパンションジョイントを設けたり、床スラブや押えコンクリートの熱伸縮による亀裂発生を防ぐ等の処置が必要である。これらを含め霞が関ビル防水工事において実際に検討し、実行した内容を報告している。

防水アーカイブズに関する研究
霞が関ビルの人工地盤防水層の納まりと施工(2)

1372 日本建築学会大会 (関東)2020年9月
名取健太郎、内藤龍夫、松尾隆士、田中享二

要旨 前報 「防水アーカイブズに関する研究霞が関ビル人工地盤防水層の納まりと施工⑴」に引き続き、ここでは人工地盤の防水仕様と各部の納まり、及び施工上留意事項等について、特に高層部と周辺低層部との取合部に採用された躯体エキスパンションジョイントの納まりと押えコンクリートの伸縮目地について報告している。

また、竣工後約30年経過した時点でタイルが石貼りに変更になったのを機会に、漏水の有無と防水材の劣化度について調査の結果、特に問題は発生していないことも明らかにした。

防水アーカイブズに関する研究
シーリング材の施工要領書とJASS8防水工事

1401 日本建築学会大会(関東)2020年9月
関原克章、寺内 伸、中沢裕二、松尾隆士、森田喜晴、田中享二

要旨 本報告では、シーリング材の施工仕様書・施工要領書の成り立ちの経緯および日本建築学会建築工事標準仕様書JASS8防水工事「シーリング工事」との関係について行った調査結果である。

シーリング工事は、油性コーキング材の国内生産開始から約15年間、製造会社による責任施工が主体のため施工仕様書が使われた。その後、専門工事業体制となり施工要領書に変っている。当時を知る人が少ない中、調査には㈱マサル・内藤龍夫氏、福田早苗氏らが協力した。

(文責:森田喜晴)

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防水アーカイブズに関する研究
その10 霞が関ビルのメンブレン防水の概要

1497 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
内藤龍夫、名取健太郎、松尾隆士、田中享二

要旨 我が国最初の超高層ビルである霞が関ビル(高さ147m、地上36階建)は着工後3年という短期問で1968年に完成してから、既に50年以上が経過している。その間に多くの生産技術・施工技術が開発された。

霞が関ビルの防水仕様の決定に当たっては、防水施工箇所を高層部(屋上階、設備機械階、各階バルコニー)と低層部(人工地盤、地下駐車場等)に分け、地震時の揺れへの対応の要否、高層に伴う強風時に対応できる防水仕様の選定、及び施工面からは高所作業のため、資材の揚重・運搬時の作業効率、安全性及び保守面が容易であることを重点に置いて検討した結果、仕様が決定された。その概要を報告している。

防水アーカイブズに関する研究
その11 霞が関ビルの屋上防水層の納まりと施工

1498 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
名取健太郎、内藤龍夫、松尾隆士、田中享二

要旨 前報、防水アーカイブズ研究その10(霞が関ビルメンブレン防水の概要)に引き続き、その11として霞が関ビルメンブレン防水のうち屋上防水について報告。公共工事標準仕様書(平成28年度版)による屋根保護防水密着工法(A―1)、(A―2)と霞が関ビル屋上防水工法と比較している。当時、熱アスファルト8層防水工法と呼称され霞が関ビルで採用された仕様はルーフィングが3層で、そのうちの1層に特殊ルーフィングが使用されており、性能上からは(A―I)(A―2)の間に位置していると思われる、としている。

竣工後50年以上経過しているが、材質的には殆んど劣化も無く、また、漏水等の不具合も生じていない。

防水アーカイブズに関する研究
その12 都市再生機構(旧日本住宅公団)の防水仕様書類の変遷と防水保証について

1499 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
矢内泰弘、田中享二、松尾隆士、中沢裕二、森田喜晴

要旨 日本住宅公団は1955年7月に設立され、住宅及び宅地の供給を行ってきたが、1981年10月1日住宅・都市整備公団法により解散.業務は住宅・都市整備公団に承継された後、1999年10月に都市基盤整備公団を経て、さらに地域振興整備公団の地方都市開発整備部門と統合して2004年都市再生機構へ移管された。

日本住宅公団が設立された1955年の11月には『工事共通仕様書』が制定された。以降、概ね3年ごとの改訂を経て平成17(2005)年版で廃止された。『保全工事共通仕様書』は昭和59(1984)年版から改修工事に対応する形で制定され、現在に至っている。今回の報告は、WGの調査で得られた資料を基に、都市再生機構の防水仕様の変遷の概要と、その中で特に重要と思われる10年間の防水保証について経緯と意義を考察している。

防水アーカイブズに関する研究
その13 防水工事用アスファルトの変遷

1500 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
関原克章、田中享二、松尾隆士、中沢裕二

要旨 防水層の性能は防水工事用アスファルトの性状及びルーフィング類の物理的性状が大きく影響をする。前年行った「ルーフィング類の基材の変遷」に続いて、本報では防水工事用アスファルトの明治初期からの変遷について調査、結果を次のように報告した。

①始まりは、天然アスファルトを漆喰のように塗りつける防湿目的が主であった。地下室の床、壁、屋根へ塗布していた。

②原油の精製が始まり、副産物のアスファルトピッチが生産されるようになり、天然アスファルトと混合し品質も安定し需要が拡大した。

③アスファルトの塗布のみの欠点を補うため、フェルト、ルーフィング、麻布等との併用が始まった。

④建築学会仕様書の雑工事にアスファルト防水が仕様化された。

⑤ブローンアスファルトが国産化され、品質が規格化された。

⑥昭和3年日本建築学会標準仕様が防水防湿工事として制定され、初めてアスファルトの品質が規定された。規格項目は針入度、溶融点(環球法)、伸度の3項目であった。

⑦防水用に適したアスファルトコンパウンドが出現。感温性を改善し、ダレにくいものへ。

⑧触媒ブローンアスファルトが開発され、防水工事用アスファルトのJISが制定。PI値、フラース脆化点、ダレ長さ及び加熱安定性が防水工事用として追加規格化された。

⑨2005年JASS8まで、アスファルトの大きな変更は無かった。

⑩環境対応防水工事用アスファルトが開発され、施工環境が改善された。

防水アーカイブズに関する研究
その14 シーリング材練混ぜ機関連資料収集状況 その1

1521 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
飯島義仁、野口 修、寺内 伸、松尾隆士、田中享二

要旨 既報の「霞が関ビルCWシーリング施工関連」、「シーリング施工専門工事業関連の資料収集状況」に関連して、練混ぜ機の開発等の経緯と使用状況の変遷について発表した。

日本で最初に登場した弾性シーリング材は、2成分形ポリサルファイド系である。戦前に開発されたポリサルファイドは、戦後ニューヨークの国連ビルのガラス回りなどに使用された。日本には1954年にポリマーが、1958年頃から製品が輸入され、自動車商社・槌⾕商店等が販売していた。海外の建築用シーリング材はほとんどが1成分形である。日本に2成分形が持ち込まれた理由は、時間のかかる船便では当時の1成分形は貯蔵安定性に問題があったためと推定される。輸入製品はほとんどが1㎏⽸で、主な用途は自動車のガラス回りガスケットの補修であった。練混ぜは、⽸の中の材料を棒状のもので手練りし、ガスケットのつなぎ目にヘラで施工していた。

防水アーカイブズに関する研究
その15 シーリング材練混ぜ機関連資料収集状況 その2

1522 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
野口 修、飯島義仁、寺内 伸、松尾隆士、田中享二

要旨 前報のシーリング材練混ぜ機関連資料収集状況その1で、日本における2成分形シーリング材の登場とともに練混ぜ機が登場したこと、最初の超高層・霞が関ビルにおいて指摘された練混ぜの問題点などについて報告した。本報告は、その練混ぜ機の発展とその後の変遷についての報告である。

(文責:森田喜晴)

< 報文の標題・番号は発表時のまま記載 >

防水アーカイブズに関する研究
その5 防水アーカイブズ資料としての「ひと」情報収集の現状

1624 日本建築学会大会(東北)2018年9月
桑田恵美、松尾隆士、田中享二

要旨 わが国の防水は100年を超える歴史を持っている。この間多くの材料・工法が開発され、多くの人が関与し、現在に至っている。ただこれら情報を保存する習慣、それを受け止める仕組みがなかったため、貴重な防水遺産が散逸・消失し、現在もその状況が続いている。防水アーカイブズにおける収集対象は大きくは「ひと」、「もの」そして「文書」であり、田中主査は中でも「ひと」情報を重視している。ここではそれらの収集成果を報告した。

防水アーカイブズに関する研究
その6 アスファルトルーフィング類における原紙・原反の変遷1 原紙

1625 日本建築学会大会(東北)2018年9月
関原克章、田中享二、松尾隆士、中沢裕二

要旨 アスファルト防水層は、アスファルトルーフィングと防水工事用アスファルトの積層により構成されている。防水層はアスファルトにより防水性が確保され、ルーフィング類の原紙・原反が物理的性状に大きく寄与している。わが国で製造されたルーフィング類の基材の変遷は、アスファルト防水層の性能向上の過程を知る上で意義深い。本報では、ルーフィング類の基材の変遷の概要と明治期からルーフィング類に用いられている原紙の変遷について報告している。

アスファルトルーフィングは昭和初期まで主に米国からの輸入品に依存していたが、近代工業の勃興と発展により国産品に移行してきた。また、勾配屋根の下葺き材として現在も主流の座を占めていることを示した。

防水アーカイブズに関する研究
その7 アスファルトルーフィング類における原紙・原反の変遷2 合成繊維不織布原反

1626 日本建築学会大会(東北)2018年9月
中沢裕二、田中享二、松尾隆士、関原克章

要旨 明治期から現在に至るまで、原紙を基材としたアスファルトルーフィングは保護防水層を中心として使用されている。しかし、アスファルトルーフィングの原紙は、故紙、麻や綿などの襤褸(らんる(ボロ布))の短繊維を水中に分散させ、漉いて製造する湿式製法のため、引張性能などの機械的強度に劣る。また、水分や湿気を吸収しやすく、寸法安定性や耐腐朽性に劣るなどの欠点があった。そのため、明治後期より麻布などの織布や金網をアスファルトルーフィングの基材として用いるなどの提案がなされてきた。本報では、合成繊維不織布を基材として用いたルーフィング類の開発の背景とその特性についての調査で得られた資料を基に報告している。

防水アーカイブズに関する研究
その8 シーリング専門工事業関連資料収集状況-1

1513 日本建築学会大会(東北)2018年9月
飯島義仁、田中享二、寺内 伸、野口 修、松尾隆士

要旨 霞が関ビルのプロジェクトは日本のシーリング施工において記念碑的存在であり、シーリング施工専門工事業や日本シーリング工事業協同組合連合会誕生のきっかけになったと考えられる。この前後の製造会社とシーリング専門工事業との関係について、日本シーリング材工業会などに残る資料をもとに報告した。また油性コーキング材、弾性シーリング材および日本住宅公団仕様書などについて明らかにした。

防水アーカイブズに関する研究
その9 シーリング専門工事業関連資料収集状況-2

1514 日本建築学会大会(東北)2018年9月
野口 修、田中享二、寺内 伸、飯島義仁、松尾隆士

要旨 日本を代表するシーリング工事会社㈱マサルに保管されている現時点で最古の施工仕様書・要領書を検証している。資料からは1970年までは製造会社が直接シーリング工事を受注しており、製造会社自身が発行した施工仕様書が採用されている。その後は、施工専門業者で作成された施工要領書に基づき施工されることになった。製造会社が受注した最後の大型物件は、日本添加剤工業(責任者・小林茂之氏、元日立化成)の朝日東海ビル(元請・清水建設)であることなどを明らかにした。

さらに1955年油性コーキング材の国内生産が開始され、1961年油性コーキング材のJISが制定された。また、日本住宅公団の仕様書に記載されたことなどを契機として、1962年日本コーキング協会(初代会長国生祐作、 昭和化工)設立準備委員会が組織され、翌年11社で設立されたなど、施工団体設立の経緯を詳細に報告している。

(文責:森田喜晴)

< 報文の標題・番号は発表時のまま記載 >

防水アーカイブズに関する研究
その4 1933年竣工の大阪ガスビル南館のメンブレン防水について

1438 日本建築学会大会(中国)2017年8月
中沢裕二、田中享二、佐野吉彦、上西 明、松尾隆士、関原克章

要旨 近代防水の始まりとされる大阪ガス旧本社ビルの防水に関する報告である。大阪ガスビル南館は安井武雄の設計で1933年(昭和8年)に竣工した.当時は最新式の現代的な建物と言われた。本WGの活動過程で、大阪ガスビル南館の防水工事の工事記録映像の存在が明らかとなり、当時の防水の施工状況を動画で確認した。また、当該建物の室内(厨房)防水層の経年防水層分析結果も明らかとなった。本報では、同時期に竣工した東京中央郵便局の経年防水層分析試験結果との対比も含め、得た情報を報告した。昭和初期の近代建築黎明期におけるメンブレン防水は、設計、施工および材料製造が一丸となって、新規技術の開拓を模索していた時代と思える。当時の技術は技術進歩により姿、形を変え、現在にも大きな影響を与えている。

(文責:森田喜晴)

< 報文の標題・番号は発表時のまま記載 >

防水アーカイブズに関する研究
その2 霞が関ビルCWシーリング設計関連資料収集状況

1679 日本建築学会大会(九州)2016年8月
寺内 伸、田中享二、飯島義仁、野口 修

要旨 本WGは2013年4月材料施工委員会・防水工事運営委員会に、防水アーカイブズありかた検討WGとして設立された。その重要性とその意義・目的などは2014年度建築学会大会で報告されている。その後2015年4月防水アーカイブズ資料収集・整理WGが設立され、具体的な作業活動に入り現在に至っている。その第1報として霞が関ビルに関して報告している。本報文はその1である。霞が関ビルCW設計・施工は前例のないパイオニア的技術で、その後に建設された多くの超高層ビルCWシーリング設計・施工に多大な影響を与えた。

霞が関ビルCW・シーリングの設計関連の資料収集状況について報告した。特に施工直前に実施した実験により、その後の規格制定の参考になった目地ムーブメントの測定結果などについて紹介している。

防水アーカイブズに関する研究
その3 霞が関ビルCWシーリング施工関連資料収集状況

1680 日本建築学会大会(九州)2016年8月
飯島義仁、田中享二、寺内 伸、野口 修、松尾隆士

要旨 防水アーカイブズ研究その2(霞が関ビルCWシーリング設計関連資料収集状況)に続く防水アーカイブズ研究その3「霞が関ビルCWシーリング施工関連資料収集状況について」の報告である。防水アーカイブズWGの活動事例として、霞が関ビル施工関連資料収集状況および施工に関係した人名録を報告している。今後工事にかかわった職人の名前などの調査を継続する。

(文責:森田喜晴)

< 報文の標題・番号は発表時のまま記載 >

防水アーカイブズ構想とそのフィジビリティスタディ

1659 日本建築学会大会(近畿)2014年9月
田中享二、松尾隆士

要旨 わが国初の防水層施工は、明治38年(1905)大阪瓦斯本社ビルであるとされる。爾来100年以上を経て、今や防水は雨水の浸入防止、建物保護の観点から、建築に欠くべからざる技術要素となっている。一方でこれに係わる過去の材料、技術、ひとに関する情報は急速に消失しつつある。現在のものであっても同様となるかもしれない。これら蓄積された情報は単なる過去の遺産ではない。将来の防水に役立つ貴重な資料である。そのためこれらを散逸させず、保存しておく必要がある。その受け皿としてアーカイブズのような仕組みを立ち上げる必要がある。ただ残念なことに防水技術に関する類似の施設は存在しない。どのようなものを構築してゆけばよいのか。筆者らは防水アーカイブズに必要とされること、それを具体化するための事項を検討した。

(文責:森田喜晴)